利益は出ている。
でも、会社にお金が残らない。
店舗も売上も増えた。それなのに、社長の給与を上げられない。
店舗を増やし、売上も伸びている。決算上の利益も出ている。それなのに、会社の預金残高は思うように増えず、社長自身の給与もなかなか上げられない。今回の支援は、そんな状態からスタートしました。
この事例の概要
- 業種
- 美容室(複数店舗展開)
- 支援前の状況
- 売上・利益は出ている一方、会社にキャッシュが残らず、社長の給与も上げにくい状態
- 主な課題
- お金の流れの把握、店舗・スタッフ別の生産性、外部集客媒体への依存、売上偏重の経営判断
- 支援内容
- 支出構造の見直し、スタッフ別分析、集客導線の再設計に加え、MQ会計で限界利益率から目標利益に必要な売上を逆算し、店舗ごとの行動目標まで落とし込みました。
- 成果
- 営業利益 約89万円→約1,200万円、期末現預金 約97万円→約938万円、媒体依存率93.6%→51.9%、Google口コミ23件→1,426件、年間役員報酬600万円→1,400万円。さらに4店舗目を約3か月で軌道化し、その後5・6店舗目を出店しました。
数字で見る変化
単に売上を伸ばしたのではなく、利益・キャッシュ・集客構造・経営者への還元まで改善しました。
一般的な美容業と比べると、
どの位置にいるのか。
自社の数字だけでは、その水準が高いのか低いのかは分かりません。そこで、TKC経営指標(BAST)速報版の「美容業」と比較し、R7の経営状態を客観的に確認しました。
「売上規模が大きい=経営が完成している」ではありません。
利益額は業界平均を上回る一方、利益率にはまだ改善余地があります。だからこそ、売上だけでなく「どれだけMQをつくり、どれだけ利益を残せたか」を見続ける必要があります。TKC経営指標(BAST)速報版の「美容業」は、令和8年2月決算〜令和8年4月決算の黒字企業を対象とした指標です。美容業の黒字企業割合は40.6%、平均売上高は124,934千円、平均経常利益は7,659千円、売上高経常利益率は6.1%とされています。企業規模・店舗数・会計処理等が異なるため、単純な優劣ではなく参考指標として比較しています。帝国データバンクの2024年度調査では、美容室の約3割が赤字、減益を含む「業績悪化」は約6割とされており、利益を残すこと自体が容易ではない業界環境も確認できます。
売上が増えたから利益が増えた。
それだけではありません。
R6からR7にかけて、売上高は約1億9,692万円から約2億3,929万円へ増加しました。 ただし、売上だけを見ても、なぜ利益が増えたのかは分かりません。
そこで、数字をMQ会計の PQ・VQ・MQ・F・G に分解して比較しました。
R7では、売上増加によって MQが約3,048万円増加 しました。
一方で、店舗拡大や人員増加により、 固定費Fも約1,937万円増えています。
固定費を増やさないことが、良い経営とは限りません。
成長に必要なFを使い、その増加額以上のMQを生み出せるかどうかが重要です。今回は、増加したMQ約3,048万円が、 増加したF約1,937万円を上回りました。 その差額約1,111万円が営業利益の増加につながっています。
「売上を増やす」ではなく、 Fを使って、それ以上のMQをつくる。 これがR6からR7の変化をMQ会計で見たときの本質です。
売上は約2億円。
それでも、お金が残らない。
会社は複数の美容室を展開し、令和6年度には売上高が約1億9,692万円まで成長していました。
しかし、営業利益は約89万円。売上高に対する営業利益率は約0.45%です。
売上規模は大きくなっている。それでも、会社に十分なキャッシュが残らず、社長自身の給与も思うように上げられない状態でした。
「売上をもっと増やせば、会社は良くなる」
本当にそうなのだろうか。そこで私たちは、売上や利益だけを見るのではなく、「売上 → 利益 → キャッシュ」の間で何が起きているのかを整理することから始めました。
「売上を増やせば解決する」が、
本当の問題ではなかった
会社の数字と実際のお金の流れを一つずつ確認すると、いくつかの課題が見えてきました。
- 会社から出ていく支出の中に見直す余地がある
- 店舗別・スタッフ別の収益性が十分に見えていない
- スタッフを売上中心で評価しており、育成と利益の関係が見えにくい
- 集客を外部媒体に大きく依存している
- 売上・利益・キャッシュが別々に管理され、経営判断につながっていない
会社が稼いだ利益をキャッシュとして残し、そのキャッシュを次の成長へ配分するための経営構造が十分に整っていなかったのです。
取り組んだこと
売上を追うだけではなく、支出・人・集客・数字の使い方を一つの経営として見直しました。
まず「会社から出ていくお金」を整理する
最初に着手したのは、売上を増やす施策ではありません。会社から出ているお金を一つずつ確認し、「この支出は、本当に会社の成長に必要なのか」を整理しました。
広告費、人件費、教育費など、将来の売上や利益につながる支出まで削ってしまえば、短期的にはキャッシュが増えても会社の成長力を失います。
単なる経費削減ではなく、会社のお金を「何に使うのか」そのものを見直すことが最初の一歩でした。
スタッフを「売上」だけで評価しない
トップスタイリストとデビュー直後のスタイリストでは、役割も期待される数字も異なります。
そこでスタッフを「トップ層/ミドル層/デビュー直後/アシスタント」など、役割や成長段階に応じて整理しました。
- 客数・客単価
- 生産性
- 利益への貢献
- 成長率
- 今後期待する役割
誰を、どこまで育てれば、店舗と会社の利益がどう変わるのか。
人件費を単なる固定費として見るのではなく、人への投資と会社の利益をつなげて考える仕組みへ変えていきました。
集客媒体への依存度を数字で把握する
支援前、新規集客の93.6%を外部集客媒体に依存していました。
外部媒体そのものが問題なのではありません。しかし依存度が高くなりすぎれば、広告費を払い続けなければ新しいお客様との接点を維持できません。
「外部媒体をやめる」のではなく、外部媒体で出会ったお客様を、自社で継続的に関係を築けるお客様へ変えていくことを目指しました。
その結果、外部集客媒体への依存率は93.6%から51.9%へ低下しました。
Google口コミと公式LINEを「会社の資産」に変える
支援開始時、3店舗合計のGoogle口コミは23件でした。各店舗で口コミを継続的に蓄積する仕組みを整えた結果、1,426件まで増加しました。
さらに、一度来店されたお客様との接点を外部媒体だけに依存せず、公式LINEへ移行する仕組みも整備しました。
毎月広告費を支払って集客するだけではなく、時間とともに会社に蓄積される集客基盤をつくることを目指しました。
「利益100万円」を「1日約4,000円」に変える
数字を「報告」ではなく「判断」に使うため、社長だけでなく各店舗の店長にも数字を使って考えてもらいました。
経営会議で投げかけたのは、シンプルな問いです。
来期、各店舗で税引前利益を今期より100万円増やすには、売上をいくら増やせばいいでしょうか?
当時(R6)の限界利益率は約75.8%。税引前利益を100万円増やすために必要な売上を逆算すると、約132万円です。
しかし、「年間132万円売上を増やしてください」と伝えても、現場では具体的に何をすればいいのか分かりません。そこで、さらに現場で使える数字まで分解しました。
つまり、1店舗あたり今より1日約4,400円売上を増やせばいい。
「利益を100万円増やす」と聞くと大きな目標に感じます。しかし「1日約4,400円」と考えると、店長たちにも「それなら実現できる」という感覚が生まれました。
「1日約4,400円」を、現場の行動に変える
必要な数字が分かれば、次に考えるのは「どうすれば1日約4,400円を増やせるのか」です。
当時、予約キャパシティは約80%まで埋まっていました。
そこで単純に広告費を増やすのではなく、まず人員のローテーションを見直し、既存の人員で受けられる予約枠そのものを増やすことに取り組みました。
予約キャパを増やす
人員のローテーションを見直し、既存人員で受けられる予約枠を増やす。
次回予約につなげる
会計時に次回予約をご案内し、クーポンだけに頼らず再来店していただける関係をつくる。
自社の流入経路を増やす
公式LINEやSNSの運用を強化し、外部集客媒体以外からの流入経路を育てる。
「売上をもっと上げよう」という曖昧な目標ではなく、利益目標から逆算して、現場が今日何をすればいいのかまで数字をつなげました。
目標達成を「評価される仕組み」までつなげる
目標を設定し、行動を決めても、数字だけでスタッフを管理する仕組みにはしませんでした。
大切にしたのは、目標を達成した店舗と、その成果をつくった人をきちんと評価することです。
店舗として生み出した成果を、経営者がきちんと認める。
成果につながったスタッフの行動を、店長が認めて褒める。
社長には、目標を達成した店舗と店長をきちんと評価してもらう。そして店長には、その成果をつくった店舗スタッフを評価し、言葉にして褒めてもらう。この流れを継続して徹底しました。
数字は、人を責めるためのものではありません。
自分たちの行動が会社の利益につながったことを、確認し、評価するための共通言語です。「利益100万円」という会社の目標を、「1日約4,400円」という現場の目標へ。そして達成した結果を評価と称賛へつなげました。
次の出店に向けて、成功を「仕組み」に変える
店舗で成果が出ても、その成果が特定の店長やスタッフの能力だけに依存していれば、店舗数を増やすほど経営は難しくなります。
そこで次の出店を見据えて、店舗運営の方法をマニュアルとオペレーションへ落とし込んでいきました。
目的は、きれいなマニュアルを作ることではありません。
「今うまくいっていることを、別の店舗でも再現できるか」を検証することです。
店舗運営のやり方を言語化する。
誰でも確認できるオペレーションへ落とす。
仕組みで本当に運営できるかを試す。
4店舗目で答え合わせ。そこから5店舗目、6店舗目へ
マニュアルをもとにしたオペレーションが、本当に新しい店舗でも機能するのか。その「答え合わせ」として、4店舗目をオープンしました。
4店舗目はオープンから約3か月で軌道に乗りました。
これによって、新規出店は「社長の経験と勘だけに頼った挑戦」ではなく、一度検証した仕組みを再現する投資へ変わりました。
令和7年には4店舗目の結果を確認したうえで、5店舗目、6店舗目の出店へ進みました。
利益を生む → 行動に変える → 評価する → 仕組みにする → 再現性を確認する → 拡大する。
このサイクルをつくったことが、多店舗展開を進める土台になりました。
売上を追う経営から、
利益とキャッシュを残す経営へ
令和7年度の売上高は約2億3,929万円、営業利益は約1,200万円。営業利益率は約0.45%から約5.0%まで改善しました。
さらに、長期借入金を1,340万円返済しながら、現預金は年間で約851万円増加。期末現預金は約938万円となりました。
そして、支援開始時には年間600万円だった役員報酬を、年間1,400万円まで見直すことができました。
「お金が残らない」から、
「次に何へ使うか」を考えられる経営へ
今回の変化は、預金残高が増えたことだけではありません。
どこで利益を生み、
どこへお金を使い、
いくら会社に残し、
次に何へ投資するのか。
キャッシュが残れば、経営の選択肢が増えます。
大切なのは、単純に「お金を貯めること」ではありません。会社が稼いだお金を、経営者自身が意思を持って配分できる状態をつくることです。
「売上を追う」から、
「自分で経営を考える」へ
「年商2億円まで上げたい」と言っていた私に、Bottinoさんから「簡単ですよ。銀座の10億円の土地を買って、それを2億円で売れば年商2億円です」と言われたことがありました。
その言葉で目が覚めました。今では、年商や売上だけに固執していた自分がバカだったと思います。
実際、この会社は令和6年度には約1億9,692万円を売り上げ、かつて目標としていた「年商2億円」にほぼ到達していました。
しかし、その年の営業利益は約89万円。期末現預金は約97万円でした。
年商2億円という目標を達成することと、良い会社をつくることは必ずしも同じではない。
会社を立て直して大きくするために、アドバイスや分析結果をもらううちに、「じゃあ、ここをこうしたらいいのでは?」と自分でも普段から考えることが習慣になりました。これが一番良かったと思います。
Bottinoさんは最初から答えをくれるわけではありませんでした。案出しにも付き合ってくれて、一緒に最善策を考えることを大切にされていました。
どうしても自分から案が出ないときには、会話の中にヒントを散りばめてくれました。ありがとうございました。
答えを出すことより、
自分で答えを出せるようになること
外部の専門家が毎回答えを出してしまえば、その場の問題は解決するかもしれません。しかし、次に別の問題が起きれば、また外部に答えを求めることになります。
だからBottinoでは、分析結果を提示して「こうしてください」で終わるのではなく、経営者と一緒に考えることを重視しています。
経営者自身が数字を見て、自分の意思で「次に何をするか」を考えられるようになったこと。それも、この支援によって生まれた大きな変化です。
Bottinoが支援したこと
今回行ったのは、単なる経費削減でも、集客コンサルティングでもありません。財務だけを見たわけでもありません。
財務・キャッシュ・人・集客・組織を一つの経営として捉え、数字をもとに意思決定できる仕組みをつくること。
Bottinoが目指しているのは、きれいな試算表を作ることではありません。